2006年08月16日
みずうみ@これがばななワールド?
大阪発札幌行き、トワイライトエクスプレスの車内で読んだ。
4号車のサロンカーは高さ2.5m×幅2mはあろうかというパノラマウイ
ンドウが日本海側に並んでいて、そこのボックス席に陣取って景色を見
ながら前半部分を読んだ。
福井から金沢、富山にかけては田園地帯を走ることが多い。
よく見ると稲穂が出始めた田んぼは一見黄緑色に見え、新緑の色のよう
に鮮やかできれいだ。稲穂は黄色っぽい色だから緑の葉とミックスされ
てそんな色に見えるのだろう。
昼間から珍しくビールを飲みながら、連続するパノラマをチラチラ見な
がら本の世界に浸っていく。
主人公のちひろはバーのママの私生児。でも、相手の男性も認知してく
れて、ママが死んだ後も生活に不自由ないよう金銭的に援助してくれて
いる。なんとなく美大に行って壁絵画家として仕事をこなしている。今
はひとりぐらし。
中島くんは、すぐ近くのアパートに住む男性。お互い窓の外をなんとな
く眺める習慣があって、なんとなく互いを意識し始める。ちひろは中島
君の凛とした姿に惹かれはじめる。
たまにお茶をしたりする間柄になるが、体の関係もキスもなく、ちひろ
は勝手に中島君はゲイなんだろと思っていた。
ある日、中島君は半ば強引にちひろの部屋に泊まっていく。
「自分がセックスできるかどうか試してみたい」と言って体も求める。
ちひろは中島君が途方もない心の傷を抱えている人だと見抜く。
トワイライトエクスプレスは夕暮れ近づく日本海の表情を間近に見なが
ら北上していた。
夕食の弁当が来て、落ち着いて食べたくなり、いったん個室に戻って食
べた。
食べ終えると夕闇が迫っていた。
結局個室でボーっとしながらiPodのスイッチを入れ、ParisMatchのアル
バムを2枚連続で聞きながら「みずうみ」の続きを読んだ。いつの間に
か「みずうみ」を読み終えていた。その余韻が夜の闇に吸い込まれてい
った。
中島君が泊まった日を境に二人の仲が急速に近づいていく。中島君は毎
日ちひろの家に泊まるようになり、時には料理を作って待っていてくれ
る。ちひろと中島君は同い年だが、中島君は大学院生でまだ働いていな
い。とっても難しい研究をしているみたいだが、ちひろは何度聞いても
ちゃんと覚えてられないぐらいだ。
ある日、中島君がどうしても行きたい場所があるのでちひろに一緒につ
いてきて欲しいと頼む。
そこで表題の「みずうみ」のほとりに建つぼろぼろの小さな家にたどり
つき、少しずつ中島君の秘密が明らかになっていく。
200ページほどの小説なので、そんなに読むのに時間はかからない。
中島君の秘密がわかるのは最後の20ページほどで、かなり値打ちを持た
せてくれる。
ただ、この小説は中島君の壮絶なトラウマを描き出そうとしているので
はない。そういう通常では理解できない背景を持った人と一緒に愛を育
みあうこと、人と人とがつながりあうことの一歩一歩を書いてある小説
だと思う。
たとえば、ちひろが公立幼稚園の壁画を頼まれながら、途中でその壁画
にスポンサーが現れてスポンサー会社のマークを絵にでっかく入れてく
れと難問を持ちかけてくる。彼女は必死になって対策を考え、スポンサ
ーを怒らせないように、でも自分の考えは通そうとする。自分の絵が芸
術的だと思っているわけではないが、看板の絵を描いているわけでもな
いと一定の筋だけは通したいという強い意志があった。
ちひろが中島君にスポンサーが急に現れて難題をふっかけてきていると
いう話をすると、中島君はちひろが現実にとった対応と同じアドバイス
をしてくれた。そのことにちひろはとても嬉しくなり、心の荷が下りた
気がした。
一定の緊張をはらみつつ直球勝負の2人。
そこには男女の仲ではなくソウルメイトのような連帯感があるのだろう。
なんか理想の純愛小説という感じがしなくもない。
安っぽいお涙頂戴の純愛ものではなく、現実を見ながら慎重に一歩一歩
前に進んでいく。バラ色の未来ではないけれど、1人で戦うより2人で
歩んだ方がずっといいと思わせる。
なんか違和感があったけれど、これがよしもとばななワールドなんだろ
うか。
ところどころに、「この表現使いたいな」と思うのはある。さすがだと
思った。
中島君のトラウマを巻末でかなり詳細に描いた意図はなんだったのだろ
うか?今の社会に対する漠然とした不安のようなものが書かせたのかも
しれない。
いろいろなことを考えながら、自分のことを思いながら、この本を読み
終えた。
4号車のサロンカーは高さ2.5m×幅2mはあろうかというパノラマウイ
ンドウが日本海側に並んでいて、そこのボックス席に陣取って景色を見
ながら前半部分を読んだ。
福井から金沢、富山にかけては田園地帯を走ることが多い。
よく見ると稲穂が出始めた田んぼは一見黄緑色に見え、新緑の色のよう
に鮮やかできれいだ。稲穂は黄色っぽい色だから緑の葉とミックスされ
てそんな色に見えるのだろう。
昼間から珍しくビールを飲みながら、連続するパノラマをチラチラ見な
がら本の世界に浸っていく。
主人公のちひろはバーのママの私生児。でも、相手の男性も認知してく
れて、ママが死んだ後も生活に不自由ないよう金銭的に援助してくれて
いる。なんとなく美大に行って壁絵画家として仕事をこなしている。今
はひとりぐらし。
中島くんは、すぐ近くのアパートに住む男性。お互い窓の外をなんとな
く眺める習慣があって、なんとなく互いを意識し始める。ちひろは中島
君の凛とした姿に惹かれはじめる。
たまにお茶をしたりする間柄になるが、体の関係もキスもなく、ちひろ
は勝手に中島君はゲイなんだろと思っていた。
ある日、中島君は半ば強引にちひろの部屋に泊まっていく。
「自分がセックスできるかどうか試してみたい」と言って体も求める。
ちひろは中島君が途方もない心の傷を抱えている人だと見抜く。
トワイライトエクスプレスは夕暮れ近づく日本海の表情を間近に見なが
ら北上していた。
夕食の弁当が来て、落ち着いて食べたくなり、いったん個室に戻って食
べた。
食べ終えると夕闇が迫っていた。
結局個室でボーっとしながらiPodのスイッチを入れ、ParisMatchのアル
バムを2枚連続で聞きながら「みずうみ」の続きを読んだ。いつの間に
か「みずうみ」を読み終えていた。その余韻が夜の闇に吸い込まれてい
った。
中島君が泊まった日を境に二人の仲が急速に近づいていく。中島君は毎
日ちひろの家に泊まるようになり、時には料理を作って待っていてくれ
る。ちひろと中島君は同い年だが、中島君は大学院生でまだ働いていな
い。とっても難しい研究をしているみたいだが、ちひろは何度聞いても
ちゃんと覚えてられないぐらいだ。
ある日、中島君がどうしても行きたい場所があるのでちひろに一緒につ
いてきて欲しいと頼む。
そこで表題の「みずうみ」のほとりに建つぼろぼろの小さな家にたどり
つき、少しずつ中島君の秘密が明らかになっていく。
200ページほどの小説なので、そんなに読むのに時間はかからない。
中島君の秘密がわかるのは最後の20ページほどで、かなり値打ちを持た
せてくれる。
ただ、この小説は中島君の壮絶なトラウマを描き出そうとしているので
はない。そういう通常では理解できない背景を持った人と一緒に愛を育
みあうこと、人と人とがつながりあうことの一歩一歩を書いてある小説
だと思う。
たとえば、ちひろが公立幼稚園の壁画を頼まれながら、途中でその壁画
にスポンサーが現れてスポンサー会社のマークを絵にでっかく入れてく
れと難問を持ちかけてくる。彼女は必死になって対策を考え、スポンサ
ーを怒らせないように、でも自分の考えは通そうとする。自分の絵が芸
術的だと思っているわけではないが、看板の絵を描いているわけでもな
いと一定の筋だけは通したいという強い意志があった。
ちひろが中島君にスポンサーが急に現れて難題をふっかけてきていると
いう話をすると、中島君はちひろが現実にとった対応と同じアドバイス
をしてくれた。そのことにちひろはとても嬉しくなり、心の荷が下りた
気がした。
一定の緊張をはらみつつ直球勝負の2人。
そこには男女の仲ではなくソウルメイトのような連帯感があるのだろう。
なんか理想の純愛小説という感じがしなくもない。
安っぽいお涙頂戴の純愛ものではなく、現実を見ながら慎重に一歩一歩
前に進んでいく。バラ色の未来ではないけれど、1人で戦うより2人で
歩んだ方がずっといいと思わせる。
なんか違和感があったけれど、これがよしもとばななワールドなんだろ
うか。
ところどころに、「この表現使いたいな」と思うのはある。さすがだと
思った。
中島君のトラウマを巻末でかなり詳細に描いた意図はなんだったのだろ
うか?今の社会に対する漠然とした不安のようなものが書かせたのかも
しれない。
いろいろなことを考えながら、自分のことを思いながら、この本を読み
終えた。
Posted by koppel055 at 23:09│Comments(0)
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